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2020年【第1回】長期スパンから見るドル円の予想-長期金利編-

目次

初めに

20年くらいの長期スパンで考えるとドル円相場は円安に向かうと考えます。

日米長期金利差がドル円の価格に与える影響は?

日米の金利差がどのようにドル円に影響を与えるのかの前に、為替と長期金利の関係から簡単に説明します。

まずここでいう長期金利とは市場で流通している期間が10年の国債につく利回りのことを指します。一般的に1年間保有するとX%の利息が付くというイメージをしてもらえるとわかりやすいと思います。

この長期金利がどのようにドル円の価格に影響していくのかを解説します。

たとえばアメリカの5%、日本の長期金利が1%のである場合のことを考えてみます。

この状況で100万円分の米国10年債と日本の10年債を持っていると仮定すると、

米国債は年間5万円利息が付き、日本国債は年間1万円利息が付くことになります。

米国債のほうが投資するならリターンが大きいことを考えると米国債に投資するために円をドルに換える動きが活発になります。

結果的に米ドルの需要が高まり、日本円が売られるためドル高円安になるのです。

つまりドル円で考えると金利が高い通貨高になり相対する通貨安という組合わせになるということで、

逆を言えば金利差が小さくなれば通貨同士の価値が近くなるので格差が是正されていくということになります。

今まで金利差の動向とドル円価格の動きは?

それでは実際、過去の金利差とドル円の動きを振り返ってみましょう。

1981年ごろアメリカでは、アメリカでは長期金利は15%を超えるなど今では考えられないような数値でした。

レーガン大統領の下、インフレと不況が同時に来るスタグフレーション、冷戦で軍事費の拡大、対日貿易の大幅な赤字に苦しんでいるアメリカでは、国債を15%という利回りを約束しなければ、売却できないような状況でした。

一方で日本は、対外貿易の黒字をもとにバブルの一歩手前でした。その時の日本の長期金利は約7%程でした。

つまりこの時期における米中の金利差は約8%ほどと今現在が1%を切っている状況であるを考えるとかなり大きな金利差である言えます。

この当時の為替レートは1ドル250円ほどでした。

最近が110円を挟んでレンジ相場を形成していることを考えると、当時はかなりのドル高円安であるといえます。

この結果からも金利差が大きい場合、金利が高い通貨の価値が上昇していることがわかります。今回の例ではドルの金利がかなり高かったためにドル魅力が上昇しドル高円安になりました。

この頃を境に日米金利差は徐々に縮小傾向に進んでいきます。

リーマンショックのあと、アメリカではゼロ金利政策が取られ、日本でも1%を切るような水準になり金利差はかなり縮小していったといえます。

2020年6月現在だとアメリカの長期金利は0.7%ほど、日本の長期金利はゼロや−0.01%ほどを言ったり来たりしているような状況です。

先ほど書いたようにドル円相場は110円を挟んで動いている状況であることからやはり金利差が縮小すると通貨同士の価値が近くなることがわかります。

長期金利は何が決める?

金利の動向を左右する要因は、基本的には物価の上昇率であるといわれています。

物価が上昇するということは、物の需要が高まり相対的に通貨の価値が下がってくるので、中央銀行は金利を上昇させる操作させるわけです。

また物価は主に人件費・エネルギー価格であると考えられます。消費の高まりはつまり消費者がお金に余裕があるということとも言い換えることができるので、人件費=賃金と読み替えることができます。エネルギー価格に関しては原油価格が大きな影響を与えています。

つまり分解するとまず金利差を求めるためには物価上昇率を求める必要があります。物価上昇は、賃金上昇・エネルギー価格の動向を分析する必要があるということです。

アメリカの長期金利の予想

私は20年ほどの長期スパンで考えた時にアメリカでは賃金は今後上昇していく可能性が高いと考えています。

先日アメリカで中国製通信機器排除に向けた法案にトランプ大統領が署名したというニュースがありました。

またトランプが何かやっているよと思った方も多いかと思いますが、よくよく読んでみるとアメリカの議会が出した法案にトランプが署名したという構図のようです。

つまりアメリカは国策として中国の製品を排斥するつもりであるということがうかがい知ることできます。もちろんトランプ大統領は中国が嫌いであることは明白ではありますが、、、、。

中国の製品を排斥し、自国産業を保護する方針が今後もとられるということはつまりアメリカ人の雇用が守られることに繋がるので、自然とアメリカ国内の賃金は上がると考えることができます。

エネルギー価格に関しては、 今後復調してくるものと考えています。

現状ではコロナウイルスの影響で下がってはいますが、アメリカにシェールガスの企業が多くあることからアメリカ政府は必死で彼らを保護していくことでしょう。保護するために他の産油国との交渉で原油の生産を少なくすることによって原油価格を上昇させるように持っていくと予想しています。

原油自体、再生可能エネルギーという将来有望なライバルが控えていることを考えると産油国同士の協調は自然と図られていくのではないのかと考えています。

(原油先物がマイナスになったときはリアルタイムで同僚と歴史的なものが見れたと喜んでいました。タンカーをもいれば原油とお金をもらいに行きたかったです。)

以上のことからアメリカの物価はコロナ不況を抜けると長期的に見るとしっかりと上昇していくと考えています。

日本の長期金利の予想

私は日本では長期スパンでの賃金の上昇は望めないと考えています。理由としては皆さんご存知の少子高齢化による社会保険料の増大です。今更説明も不要だとは思いますが、高齢者が増えることによってそれを支える現役世代野負担が大きくなり、実質的に受け取れる賃金も下がることでしょう。

エネルギーに関しては日本はほとんど輸入に頼っているため、他のエネルギー産出国の動きを眺めていくだけです。

したがって日本では物価の上昇はなかなか見込めず、長期金利も低いままが維持されると考えられます。

結論

米国はコロナをぬけると、インフレ(物価上昇)傾向が予想されます。

一方で日本は物価は低位維持であると考えられます。

したがって米国長期金利は高まり日本の長期金利は低位維持であることが予想されます。

この場合、ドルの価値が上昇するということなので、ドル高円安が進むことが示唆されます。

次回の考察ポイント

次回の考察では、テクニカル分析を長期スパンで適応してドル円と長期金利の動向を予想し、具体的なドル円の価格とその時期を予想する、または政治などのイベントの時系列をより詳細に分析していくという視点で考えていければと考えています。

最後までお読みいただきまして誠にありがとうございます。為替の予想は株に比べると考えなければならないことが多すぎてまだまだ突き詰められるところがたくさん残っているなと書いていて痛感しました。今回の記事が 学生さんレポートや皆様の資産形成の一助になれれば幸いです。