目次
具体的な成約事例や成果
・株券移管による新規開拓 (持込合計約10銘柄、当時時価総額合計約1.5億円)
・外国株式投信 累計2000万円
・株券貸借取引 5000万円
顧客との面談までの経緯
電話による営業の過程でご来店頂き、面談となりました。
電話口の様子からとてもしっかりしていられるが、かなり高齢な女性で、 非常に用心深く、詐欺等を警戒していたこともあり、積極的な勧誘や訪問が逆効果になると思ったため、まずはお客様の不安を取り除くことを目標にしました。
そのため商品の売り込みにならないよう、相場連絡という名目で最初は電話をしていました。
お客様(警戒しながら) 『あなたも営業で電話をかけてきたんじゃないの?株は持ってるけど売らないし、投資信託なら買わないわ』
私 『もちろん投資信託のご紹介やご購入を頂けるのであれば嬉しいですが、それよりも、投資性の資産をお持ちの方には相場変動が激しい時勢ですので、資産状況にご不安が多いだろうと思っています。そのため相場の状況のご連絡をしています。お客様のお持ちの銘柄の状況は大丈夫ですか?』
顧客の事前情報や提案の仮説
基本電話での営業に関しては、電話口でのお客様との会話しか情報源になるものはありません。
もちろんお客様の喋り口調や声の大きさ、トーンなどが大事なのは言うまでもないです。
このお客様とお電話でお話しさせて頂いた時の第一声の反応はかなり強烈な断り文句からでした。 ここからが大きな『仮説』となります。
私の中で「強烈に断るタイプのお客様」の状況を、いくつかのパターンに分類します。
①本当に興味も運用に回すような資産もなく単純に迷惑という方
②投資資産は持っているが取引をこれ以上拡大させるつもりが全くないので、勧誘の電話にうんざりしているという方
③自分自身投資をしているが、『何らかの理由で』うまくいかず、懲り懲りしており、勧誘の電話が来るとイライラしてしまうという方
①のケース
基本はもうアプローチしません。
これは一回の電話や俗にいうただの『ガチャ切り』では、金融資産がなく投資にも興味が全くないか判断がつかない場合も多いです。
そのため私はお電話するお客様はリスト化しており、いつ、だれに、どんな話をしたかがわかるようにエクセル管理していて、最低でも3回はお電話します。
奥様しか出ない場合は、時間を変えて御主人が出そうなタイミングにもお電話してみていました。
②のケース
お電話しているうちに何かチャンスがあるかもしれないので、 どんどん連絡を取るようにします。
③のケース
これが一番のチャンス 困っていることがないかどうかを探りながら、情報提供を行い解決できるヒントや糸口をお客様自身に見つけてもらえるようにします
今回のお客様のケースでは、③のケースでした。
他証券会社にて株を持っているが取引担当の営業マンがガツガツ系、いらないという投資信託の営業をしつこくしてくるとのことでした。
ここで今回のケースの『仮説』です。
欲を出さず本当にお客様の為に情報提供をしていれば、資産管理を任せてもらえることがあるかもしれないということです。
顧客から信頼を得たポイント
一番のきっかけは私からの
『その株式資産の管理を私にお任せいただけませんか?』 だと思います。
『そうね、悪い人じゃなさそうだし考えておくわ』 というのが最初のうちのお客様の反応でした。
証券マンとして1年以上経過し、いくつかの経験を経ていた私は、『株式相場の連絡を口実にお客様との連絡の回数を増やし信頼をつかめるようにすれば、新規口座開設やお取引につながりやすい』ことを知っていたので、まずは情報提供やお客様の『お話を聞く』ということに努めていました。
基本的に毎朝欠かさず寄り付きのタイミングでお電話し相場状況をご連絡していました。
すると、3か月位経ったころ店頭にフラっと株券をもってお越し頂けたのです。
顧客へのヒアリング内容
すべての株券のお預かりを一通り頂くまでに1年以上はかかりました。
お客様とは本当に色んなお話をさせていただきました。
残念ながら細かいお話は忘れてしまいましたが、このお客様の背景として本当に大切だったのが、結果的には『資産を大切に守りたい』という気持ちに寄り添ったことだと思います。
私はお客様とお話しする中でよく耳にしたのが、 『これは主人からもらった株で・・・これは父から譲り受けたもので・・・』 というお話でした。
それぞれの銘柄に本当に愛着を感じておられる様子で、電話口や窓口で株を保有した時のエピソードや保有株の企業との思い出をたくさん聞かせてもらいました。
お客様との最大のお取引となった5000万円の株券貸借取引をいただいたときは、特にお客様の銘柄に対する愛着を感じました。
時はリーマンショックからサブプライムショックの最悪の時代です。
それでもお客様は保有銘柄を売りたいとはおっしゃいませんでした。
ですが、有効に運用したいという気持ちはあるのです。
私 『せっかくならお持ちの株券に働いてもらいませんか?』
お客様 『そうねー、黙っておいても株価は下がるし、配当も少ないしそんなことができるの?お願いしようかしら』
びっくりするほどスムーズにお取引いただけました。
具体的な提案内容
- 株券貸借取引
- 株式相場が上昇しなかった上、株式配当も当てにならなくなってきていたが、 一定期間お客様ご保有の株券を証券会社に預けて頂くという『株券貸借取引』により、お客様には貸借料を確実に受け取って頂くことができるため。
- リーマンショックからサブプライムショックとショック続きの下落相場。当面大幅回復などは期待しづらいマーケット環境でした。
具体的な顧客のコメントとのご自身の切返し
私 『お客様がこの株に対してご売却のご意思がないことは承知しておりますが、 ただ下がっていくのを見ているだけでは、せっかくご保有になっているこの株の資産価値がただ下がるだけで、本当にもったいないことなのではないでしょうか?
それよりもこの株式にもせっかくご保有を続けるのであれば、株券貸借取引をして頂くことで、株券自身にも働いてもらいませんか?』
顧客 「そうね、一定期間お貸しすることで貸借料が入るのであればそのほうがいいわね。満期になれば株券は返して頂けるんですものね。」
その提案が成功した・成果を得た理由
お客様との信頼関係があったからと、保有資産を大事に守ったうえで効率的に運用できたら尚嬉しいというお客様のニーズに合致したため。
この案件から得た学びや感想
お客様の思いに寄り添って営業することで、お客様のご意向を見極めることがすごく大切なことだと感じました。
証券会社に勤務しておりますと、ついつい投資性の高い商品の販売や、単純な売買に固執しがちであるかと思いますが、お客様が証券会社に求めることは違う場合があるということです。
『譲り受けた資産を大切に守っていきたい、絶対に株券を売ったりはしない。』
そう考えているお客様でも、株券貸借取引ならご興味を持って頂けるかもしれません。
まとめ
相場状況の報告などから入り、少しずつ接触回数を増やして心理的ハードルを下げる方法は心理学でいうところの「Foot In The Door」と「単純接触効果」の組み合わせです。
粘り強いフォローアップから取引に繋がった素晴らしい取引だと思います。
このような心理学手法をまとめた本のおすすめはこちらです。